ダム作りの目的
ビーバーの祖先は、川や池の岸辺に巣を作って暮らす、半水生のげっ歯類でした。
ビーバーは陸上では動きが遅く、捕食者に狙われやすくなります。
そのため、巣の入り口を水中に作り、外敵が近づきにくい環境を整えました。
さらに、水位を安定させるために、木や泥を使って水をせき止めるようになります。
こうした小さな工夫の積み重ねが、現在見られるダム作りへと発展したと考えられています。
ダムは、冬を越すための食料保存にも役立ちます。
ビーバーは寒い時期に備えて、枝を巣穴の近くの水中に蓄えます。
水の流れが穏やかな場所は凍りにくく、冬でも安定して食料を確保することができます。
ダムの効果
ビーバーは水の流れる音や動きを敏感に感じ取ると、その流れをせき止めようと、本能的にダムを作ったり、排水設備を泥や枝で塞いだりします。
この習性は、置かれた環境によって全く異なる結果を生み出します。
自然の中でビーバーがダムを作ると、小川がせき止められて新しい池や湿地が生まれます。
この新しい水辺は、魚や鳥、昆虫、両生類など、多様な生物にとって貴重な生息地となり、生態系全体を豊かにします。
研究によると、ビーバーのダムは自然の洪水よりも10倍以上、川の流れ方を変える力があるそうです。
川の流れがゆるやかになることで、微生物が硝酸塩(しょうさんえん)を分解しやすくなり、川の中の硝酸塩を約50%多く取り除けるようになります。
その結果、水の中の酸素が増えて、生き物にとって住みやすい環境が生まれます。
そして、干ばつや山火事、気候変動が深刻になる中で、ビーバーの水を蓄える力は、重要視されています。
ビーバーによる被害
人間の生活圏、特に住宅地や都市のインフラに影響が及ぶと、問題が起きることがあります。
ビーバーが排水設備を塞いでしまうと、水の流れが止まり、洪水のリスクが高まったり、インフラに大きな被害が出たりします。
ビーバーのダムを撤去するには、多くのお金がかかります。
また、ビーバーは保護野生生物のため、多くの地域では、ビーバーやダムに手を加える前に許可が必要です。
ビーバーは、ダムが壊されると、水の流れや音に気づき、すぐに新しいダムを作ります。
そのため、ビーバーを駆除しても、別のビーバーが池に戻ってくれば、同じ問題がくり返され、再び費用がかかってしまいます。
ビーバーによるイタチごっこです。
そこで、ビーバーによる被害を減らすために、木の根元に金網を巻いて齧りを防いだり、Beaver Deceiverと呼ばれる、排水路を守るための金網フェンスが設置されています。
Beaver Deceiverは、「ビーバーを欺く」という意味の装置です。
水をせき止めるのではなく、パイプを使って音を立てずに水を流します。
水の音が弱くなるため、ビーバーが「ダムを作る必要がある」と感じにくくなります。
その結果、水位を保ちながら道路への浸水を防ぎ、同時にビーバーが作り出した生態系も守ることができます。
これは、ビーバーと人間が共に暮らすための工夫のひとつです。



